大人子供の日々徒然

極めてどうでもいい雑記です。

アニサキス症の報告件数が10年で20倍になった本当の理由についての考察

著作権フリーの画像ばかりでは芸がありませんので、自作のイラストレイションにて皆様のご機嫌を伺いたいと思います。お題はサバです。著作権は我にあり。

さて、秋です。魚の美味しい季節を迎えられたというだけで我々の勝利と言えます。おめでとうございます。脂の乗った美味しい魚を食べる機会も増えるでしょう。そういうわけで今回は、みんな大好きアニサキスの話題を。

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アニサキス症の報告件数が10年で20倍?

では、こちらの記事をご覧下さい。

食中毒:アニサキス 生の魚介類で猛威 10年で20倍 - 毎日新聞
 生の魚介類に付いている寄生虫「アニサキス」による食中毒の報告件数が急増している。厚生労働省の統計によると、2007年は6件だった報告件数は16年に20倍以上の124件に増え、食中毒の原因物質としてはノロウイルスとカンピロバクター菌に次いで3番目に多い。「報告は氷山の一角」との指摘もあり、専門家が注意を呼び掛けている。

さらりと咀嚼した上でまとめると……

  • アニサキス症の報告件数が10年で20倍になった
  • 原因その1:アニサキス症に報告義務が課せられた
  • 原因その2:市場を通さない流通形態が広まった

こんな感じでしょうか。状況をよく知らない人民の皆様には、多大な誤解を与えそうな内容です。ひとつひとつツッコミを入れます。ご査収下さい。

アニサキス症の報告件数が10年で20倍になった

まずは以下の表をご覧下さい。

件数
2007年 6
2008年 14
2009年 16
2010年 24
2011年 34
2012年 65
2013年 88
2014年 79
2015年 127
2016年 124

(出典:厚生労働省 食中毒統計資料)

これは、2007年から2016年までのアニサキス症の報告件数です。2007年の報告件数はたった6件なのに対し、2016年の報告件数は124件。確かに10年で20倍に増えています。

ただ、どうでしょう。20倍であることは間違いないのでしょうが、ずいぶんスケールの小さい20倍だなぁ……という気がしないでもありません。500件×20倍=10,000件なら大事件ですけどねぇ、6件×20倍=120件では何とも……。20倍という数字だけが独り歩きしている印象が大きいです。

アニサキス症に報告義務が課せられた

食品衛生法の改正に伴い、2013年からはアニサキス症に報告義務が課せられました。報告義務が課せられたことにより、アニサキス症の発生件数を正確に捉えることができるようになった……ような気がします。

ちょっと歯切れが悪いのには理由がありまして。先程の表を見て頂ければ一目瞭然なのですが、2013年を境に報告件数がスコーンと伸びているわけではないんですよねぇ。

まぁ、アニサキス症発生の実態を把握する上で有用な法改正だったことには間違いないですから、この項目に関しては特にツッコむことはございません。

市場を通さない流通形態が広まった

まずは、先程の毎日新聞の記事を一部引用します。

ここ10年ほどの報告急増は、13年から法令改正でアニサキスによる食中毒が届け出対象に明示されたのも一因だが、背景にあるのが生の魚介類の流通の多様化だ。大手の量販店や鮮魚専門店が市場の競りを介さず産地の業者から直接買い付ける「相対取引」などが盛んになり、消費者の口に入るまでの経路が複雑になっている。

魚市場を通せばアニサキスは減りますか? んなわけないでしょう常識的に考えて。かといって、相対取引でアニサキスは増えますか? んなわけないでしょう常識的に考えて。その逆も然り。

断言します。市場を通そうが通すまいが、アニサキスがいる魚にはいますし、いない魚にはいません。流通経路の複雑化は全くの別問題です。「冷蔵流通技術の進歩により、以前にも増して生魚を口にする機会が増えた」というのであれば、ほぼほぼ同意できたんですけどね。

そういうわけで、個人的にはどれもこれも100%の全面同意には至らないわけです。

報道を鵜呑みにしてはならぬ

今年に入ってやけにアニサキスが槍玉に挙げられ、生魚のみならず、調理済みの魚の消費まで落ち込んだ原因は、冒頭に挙げたような報道を鵜呑みにしちゃった人民の皆様が多かったことにあると考えます。「ここ10年でアニサキスの報告件数が激増した」という報道を、「ここ10年でアニサキス症自体が激増した」と捉えてはいけません。

私が思うに、ずっと以前から今と同じくらいの確率でアニサキス症は発生していたはずです。その根拠を以下に示します。

アニサキスはずっと昔から存在している

当たり前の話をしましょう。アニサキスは確実に有史以前から存在します。下手すると、人間の先祖がまだネズミのような姿だった頃から存在する可能性が強いんじゃないでしょうか。少なくとも、ここ100年や200年程度でぽっと出てきた新顔ではないはずです

生物学なんぞひとっつもわからない私がここまで断言するのには根拠があります。その根拠とは、我々の遠いご先祖様が編み出してきた様々な調理方法が今もなお存在していることです。

食材を調理するという行為は、人類が積み上げてきた知見の塊です。特に魚の調理方法は、先人達が腹痛に喘ぎながら試行錯誤を繰り返してきた証と言えます。
加熱系の調理方法はアニサキスのみならず、大腸菌やサルモネラ菌などの有害菌への対策を兼ねるものでしょうが、非加熱の調理方法は主に寄生虫対策だったのでは? と私は考えています。
例えば、北海道の郷土料理であるところの鮭のルイベ。これは恐らく寄生虫対策から生まれた料理です。冬に外へ放置しておいた鮭を食べても腹痛が起きなかったことから発展したものなのでしょう、たぶん。

【関連リンク】
ルイベ - Wikipedia

寄生虫を何とかやっつけて美味いものにありつくべく、先人達が編み出してきた様々な調理方法が残っていること。それが、アニサキスが遠い昔から存在し、最近になって突然現れたものではない何よりの証拠です。

アニサキス症の報告件数が急増した本当の理由(についての考察)

とは言え、報告件数自体の急激な増加は事実ですから、そこにどんなカラクリがあるのか気になるわけです。

アニサキス症の報告が増えた理由、それは「アニサキスがどんな症状であるか理解が広まったことで、誤診や見落としがなくなった」からだと私は考えています。

以前ならばアニサキス症は「魚を食べたら運悪くあたってしまった」で片付けられていたのではないでしょうか。
アニサキス症の報告が義務化される少し前から各種メディアでの言及が徐々に増え、アニサキスとはどのようなものか理解され始めた印象があります。その辺りから潮目がかわったのでしょう。
アニサキスの原因と症状が知れ渡ったことで、「あれ? この症状ってアニサキスじゃね?」という認識が医師にも患者にも広まり、それに伴って医師の誤診が減り、患者も自身の症状をアニサキスと疑うようになったのだと思います。

ひとことで表せば「アニサキスへの共通認識が形成された」ことが、アニサキス症の報告件数激増の大きな原因ではないでしょうか。もっと簡単に言えば「多くの人がアニサキスの存在に気付いた」んでしょうね。

この着想には元ネタがあります。
ずいぶん昔に放送されたテレビ番組で荒俣宏先生がこんなことを仰っていました。

最近、メガマウスやダイオウイカの目撃が相次いでいるのは、これらの生物の姿形が近年になってようやく知られるようになってきたからではないだろうか。

恐らく今までもメガマウスやダイオウイカは目撃されてきたはずだが、それらの姿形が認識されていなかった為に、目撃されても「得体の知れないなにか」と判断され、無視されてきたのではないだろうか。

出典:ETV特集「追跡 幻の動物たち 第1回 水中の巨大生物」1998年放映

細かいニュアンスは違うと思いますが、概ねこんな感じだったと思います(違っていたらごめんしてね)。アニサキス症の急増も、同じようなロジックで紐解けるのではないでしょうか。

アニサキスのみならず、古今東西様々な病気に関しても同じ解釈があてはまると考えます。例えば、「よくわかんないけど死ぬほど腰が痛い痛い痛いギャアアアアア」な症状が、現代の知見では「尿管結石」とわかったり、「よくわかんないけど足の指の間がめっちゃかゆい」症状が、現代の知見では「水虫」と判断できたり。

知見は人類共通の財産です。皆様の知見は、後世に残りますか?

まとめ

とりあえず、本エントリーで皆様に申し上げたかったのは

  • アニサキスが急増! なんてことを言うけど、昨日今日で出てきた寄生虫じゃないんだか
  • アニサキスとはどんなものかみんながわかったから、今まで見過ごされてきた事例が実はアニサキスだったと気付かれるようになったんじゃないの?

といったことです。長々とすんませんねぇ。
尚、本エントリーを書くにあたって参考にした資料のなかに、こんな記述がありました。一部引用します。

アニサキス食中毒の件数が最近、急増したとは考えられず、むしろ事件数増加の背景には、アニサキスによる感染事例を食中毒として捉え、法に則して届出するとの認識の普及があると考えられる。
出典:食中毒としての食品媒介寄生虫症:現状と検査の課題(国立感染症研究所)

ほーらご覧なさいな。国立感染症研究所の資料に「アニサキスは最近になって急増したわけじゃないよ」と書いているじゃございませんか。
新聞やらテレビやらネットメディアやらの関係者諸氏は、「アニサキス激増!」と煽る前に、こういう然るべき機関が発表した資料をきちんと読んでから報道をして下さい。マジで。

参考資料

割と硬派な内容でお送りした本エントリー、お付き合い頂きありがとうございました。
最後に、参考資料を列記して締めたいと思います(著者に関しては敬称略)。

  • 食中毒としての食品媒介寄生虫症:現状と検査の課題(2016・杉山 広【国立感染症研究所寄生動物部】)
  • 食品安全に関するリスクプロファイルシート・寄生虫(2017・農林水産省)
  • 平成22年 東京都の食中毒概要(2012・東京都福祉保健局健康安全食品監視課)

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