大人子供の日々徒然

極めてどうでもいい雑記です。

水産関係者が詳しく語る、養殖魚にアニサキスがほとんどいない理由

2017/09/19

今まで、黙っていてごめんなさい……
わたし、水産関係者なの……
白いゴム長靴とセリ人の帽子が似合う、浜の男なの……

故に、魚のことはそれなりに語れます。
つい最近の記事などは、そのあたりを活かして書いております。

そういうわけで、しばらくはアニサキス関連を中心に書いていこうと思います。宜しければお付き合い下さい。

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養殖魚にアニサキスが(ほとんど)いない理由

本題へ移る前に、まずはこちらをご覧下さい。

手書きの味が垣間見える、アニサキスの生活史です。せっかく書いたので折に触れて晒します。ただ単に、かわいく書けたから見て欲しいだけだという学説もあります。

まず、この模式図は自然の環境下のものであることをお含みおき下さい。いわゆる天然魚はこの生活環に含まれる為、アニサキスの中間宿主になってしまいます。この生活環に含まれることのない養殖魚にアニサキスが(ほとんど)寄生しないことは文脈から読み取って頂けると思います。

では、その文脈を紐解いてみましょう。養殖魚にアニサキスが(ほとんど)いない理由は、天然魚と養殖魚の間にある、ふたつの明らかな違いによるものです。

エサ

ひとつめはエサの違いです。

天然魚の場合、自分でエサを獲って成長します。この際、アニサキスに寄生された動物性プランクトン(オキアミなど)や小魚を食べることで、それを食べた天然魚もアニサキスに寄生されます。
養殖魚の場合、人間に与えられたエサで成長します。このエサが、養殖魚によるアニサキスのリスクを限りなくゼロに近づけている要因です。

ペレット

養殖魚のエサで代表的なものが「ペレット」です。

ペレットの主な原料は大豆粕(大豆油を絞った後の残り)と魚粉(魚を煮て、絞って、乾燥させて、粉砕したもの)です。
まず、大豆粕にアニサキスは混入しません。大豆に寄生するアニサキスがいたら、学会に発表できます。
一方、魚粉はその製造工程において高温で加熱・乾燥され、粉砕機にかけられて粉体になります。魚粉の原料となる魚がアニサキスに寄生されていても、魚粉となった段階でアニサキスが生き延びている確率はゼロです。
また、ペレットはDP(ドライペレット)とEP(エクストルーデッドペレット)の二種類に大別され、どちらも製造過程で高温の蒸気で加熱する工程が含まれます。

つまり、ペレットのなかでアニサキスが生き残る可能性はゼロなのです。

生餌

「生餌」と書くと、「え? 生の魚を養殖魚に与えるの? 生餌にアニサキスがいたらアウトでしょ!」と思う方もいらっしゃるでしょう。安心して下さい。養殖業界における「生餌」とは、冷凍魚のことです。

本来、生餌はその表記通り「生」の魚でしたが、保管・搬送中の品質劣化を防ぐ為、冷凍魚に切り替わって行きました。生魚から冷凍魚への切り替えは、本来の目的である品質劣化の防止に加え、冷凍させることでアニサキスの息の根を止めることができるという副次的効果をもたらしました。

というわけで、生餌にもアニサキスはいません。

MP(モイストペレット)

ついでにMPにも触れておきましょう。

MP(モイストペレット)とは、ペレットとほぼ同じ工程で作られた粉末と生餌とを混ぜ、それをペレット状に成型したものです。性状はご察しの通り、半生です。モイストと名乗るだけのことはあります。
MPも、加熱によってアニサキスを駆除した原料を使用している粉体と、冷凍によってリスクをなくした生餌との組み合わせですから、当然のごとくアニサキスはいません。

生育環境

ふたつめは生育環境の違いです。

アニサキスの寄生は、外洋を回遊する魚に多い傾向があります。サバ・サケ・イカなどがその代表的な例です。最終宿主であるクジラやイルカなどの海棲哺乳類の生息域の関係や海流の影響、アニサキスに寄生される魚の食性など、様々な要因が考えられます。

一方、養殖が行われるのは沿岸部です。給餌の管理が簡単に行えることが主な理由ですが、アニサキスが広く分布する(と、思われる)外洋から離れており、アニサキスの寄生した小魚がいけすに入り込み、養殖魚がこれを捕食してしまう確率が低いことも要因に挙げられるでしょう。

もちろん、沿岸部の魚にもアニサキスは寄生していますし、アニサキスに寄生された動物性プランクトンが外洋から海流に乗って内湾にやってくる可能性もあるでしょうから、エサの違いに比べれば、アニサキスの寄生しない理由としては弱いですけどね。

完全養殖の魚は、更にリスクが低い?

突然ですが、魚に詳しい読者諸兄からのこんなツッコミを想定していました。

「畜養の魚は、種苗の段階でアニサキスに感染してるかもしれないよね? 養殖カンパチでそんなことがあったし。完全養殖の魚なら安全なんじゃない?」

なんのこっちゃわからないあなたの為に、順を追って解説します。まずは「畜養」と「完全養殖」という言葉について。

畜養と完全養殖

魚の養殖には、大きく分けてふたつの種類があります。ひとつは畜養、もうひとつは完全養殖です。

畜養

畜養とは、「天然の環境から幼魚(種苗)を獲ってきて、それをいけすに入れ、エサを与えて大きく育てる」ことを言います。天然種苗が豊富であったり、完全養殖(後述)の手法が確立していない魚を養殖する際に用いられている手法です。
国内では主にブリ・マグロ・ウナギなどが畜養で育てられています。

完全養殖

完全養殖とは、「人の手で卵から幼魚を孵し、それを育てて大きくする」ことを言います。天然種苗に手を付けないことから、資源保護の観点で有効な手法です。国内では主にマダイ・ヒラメなどが完全養殖で育てられています。

畜養魚におけるアニサキスのリスクは?

以上の文脈から、畜養よりも完全養殖のほうがアニサキスのリスクは低いと考える方もいるでしょう。先述の通り、畜養は天然種苗を獲ってきて育てる手法ですから、天然種苗にアニサキスが寄生している可能性を否定できないわけです。その点、完全養殖なら種苗の段階でアニサキスに寄生される可能性はゼロなので、掲題のような考え方もできます。
実際に、畜養魚からアニサキスが発見された事例もあります。

養殖カンパチアニサキス寄生事件

2005年、養殖業界を震撼させる事件が起きました。養殖カンパチからアニサキスが見つかったのです。この事件は、養殖魚からアニサキスが発見された日本初の事例となりました(出典)。

原因は、中国産のカンパチ種苗でした。
中国国内でカンパチの種苗を育成した際に与えられたエサが、冷凍ではない「生」のカタクチイワシであり、そのカタクチイワシがアニサキスに寄生されていた……これが事件の発端だったのです。

この事件以降、国内においては冷凍生餌を使うことが徹底され、国産種苗の使用拡大と人工種苗の研究に力が注がれることとなりました。

現在、畜養魚におけるアニサキスのリスクは「非常に少ない」と言っていいでしょう。
養殖カンパチからアニサキスが見つかった事件は、種苗自体よりもエサの問題のほうが大きいことを図らずも示すことになりました。従って、種苗の出自が天然であるか人工であるかよりも、アニサキスの心配がないエサを与えられた魚であれば、畜養でも完全養殖でも大きな差は生まれないと私は考えています。

もちろん、アニサキスが寄生する可能性の観点から言えば人工種苗はリスクゼロですから、完全養殖の魚のほうがアニサキスのリスクは低いですが、養殖魚がいけすのなかでアニサキスに寄生された動物性プランクトンや小魚を捕食してしまうリスクは、畜養でも完全養殖でも変わらないと考えられます。

そういうわけで、本章冒頭のツッコミ(想定)に対しては、

「確かに、畜養よりも完全養殖のほうが安全性は高いだろうけど、種苗の違いよりもエサの違いのほうがこの問題に関わってくるから、そんなに変わらないと思うよ?」

という回答をして、本エントリーを締めたいと思います。お後がよろしいようで。

まとめ

さて、今回の記事はまとめ甲斐がありそうですね。ちょっとめんどくさい(本音)。それでは、やっていきましょう。

養殖魚のエサには、ペレット(DP・EP)・生餌・MP(モイストペレット)が用いられる

ペレットにはアニサキス混入の可能性がなく、生餌は冷凍されているのでアニサキスは無害化されている。MPはペレットと生餌の組み合わせなのでお察し下さい。

養殖は沿岸部で行われる為、アニサキスのリスクは低いと思われる

アニサキスは外洋を回遊する魚に多いと言われている。アニサキスが外洋に多いと仮定すると、外洋から遠く離れた沿岸部にアニサキスが寄生した動物性プランクトンや小魚がやってくる可能性は低いと思われ、更にそれらがいけすに侵入し、養殖魚が捕食してしまう可能性は輪をかけて低いと思われる。
(注)根拠としては、エサに関することに比べて弱いと考えます。

畜養魚と完全養殖魚とでは、完全養殖魚のほうがアニサキスのリスクは低いはずだが、それほど差はないと思われる

養殖魚のアニサキスに関しては、種苗の出自よりもエサの問題のほうが重要。エサさえしっかりしていれば、畜養でも完全養殖でもアニサキスのリスクはほぼないと言える。

こんな感じでしょうか。とりあえず、養殖魚についてはアニサキスのリスクが著しく低いことを認識して頂けたと思います。
とは言え、ここまで語っておきながら、「養殖魚には100%アニサキスがいないよ!」と言っていません。その辺はお察し下さい。食品に限らず、世の中のあらゆるものごとにはリスクがつきものですし、どんなに注意を払っても安全性を100%担保することはできません。

最終的には、あなた自身が下す判断が全てです。正しい判断を下し、うまいことやっていく為には、どれだけの正確な情報を集められるかが勝負の肝となります。
本エントリーが、その判断の一助になれば幸いです……と、真面目な感じで締めてみる。

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