大人子供の日々徒然

極めてどうでもいい雑記です。

苦悩のなかで放った一打。ホセ・フェルナンデス逝去とディー・ゴードンの先頭打者ホームランに思うこと

2016/11/07

多くのメディアや個人がこの件に言及しているので、とりあえず書かないつもりでしたが、この動画を見て考えが変わりました。

現地時間26日の対メッツ戦、ディー・ゴードンの先頭打者ホームラン。メジャーリーグを愛する私にとって、このホームランはふたつの点において心を揺さぶるものでした。ひとつはこのホームランが捧げられた人物について。もうひとつは、ホームランを放ったディー・ゴードンが現在置かれている状況についてです。

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若き才能・ホセ・フェルナンデス逝去

ディー・ゴードンの先頭打者ホームランは、現地時間25日に不慮の事故でこの世を去った才能溢れる若き投手に捧げる一打となりました。

ホセ・フェルナンデス

マイアミ・マーリンズのエースピッチャー、ホセ・フェルナンデス。享年24歳。

今シーズン成績、29試合・16勝8敗・253奪三振・防御率2.86。
MLB通算成績、76試合・38勝17敗・589奪三振・防御率2.58。
2013年にメジャーデビュー。28試合に登板して12勝6敗・187奪三振・防御率2.19を記録し、新人王を獲得。翌2014年のシーズン途中にはトミー・ジョン手術を受け、2015年シーズンの途中まで治療を余儀なくされますが、万全の常態で臨んだ今シーズンはその才能を遺憾なく発揮し、サイ・ヤング賞の有力候補に挙げられるほどの大活躍。

三振を取れる・制球が良い・被本塁打が少ないという三拍子揃った万能型のスターターであり、将来は間違いなくMLBの歴史にその名を刻む偉大な投手になるはずでした。

困難を克服して掴んだエースの地位

一見すると成功に彩られているかのように思えるフェルナンデスの人生は、大きな困難を克服した上に成り立つものでした。

彼はキューバからの亡命者です。4度試み、3度の失敗。投獄されてもなお諦めることなく、アメリカを目指し続けました。4度目のキューバ脱出を試みた際にボートが荒波に揉まれ、一緒に乗っていた誰かが海に投げ出されてしまいます。フェルナンデスは海に飛び込み救助に成功しますが、なんと海に落ちたその人は彼の母親だったのです。こうして、無事に亡命を成功させたフェルナンデスはフロリダ州の高校に入学するとすぐさまその頭角を表し、2011年にはマイアミ・マーリンズからドラフト1位指名を受けます。

失敗を繰り返しても決して亡命を諦めず、嵐の海で危険を顧みずに母親を助けた勇気ある青年は、子供の頃からの夢だったメジャーリーガーへの階段を順調に登り、押しも押されぬマーリンズのエースピッチャーの地位を掴みます。

誰からも愛された好青年

その能力と才能は疑う余地なく最上級のものでしたが、監督であるドン・マッティングリー(暗黒期のヤンキースを支えたスター選手。首位打者・打点王・MVP受賞)や打撃コーチであるバリー・ボンズ(シーズン本塁打数・通算本塁打数MLB記録保持者。薬物問題がなければMLB史上最高の選手のひとりだった)と臆することなく肩を組む、敵チームのマスコットとコントを繰り広げるなど、愉快なやんちゃ坊主という側面も持ち、喜怒哀楽のわかりやすい陽気な性格でファンやチームメイトのみならず、球界全体から愛された選手でした。

イチローへのリスペクト

彼のエピソードのなかでも、母国キューバでのイチローの存在について「キューバでは神様みたいな存在なんだ」と語ったインタビュー記事はとても印象に残っています。

【米国はこう見ている】マーリンズのエースが明かす事実 イチローはキューバで「神のような存在」
マーリンズのエース右腕ホセ・フェルナンデス投手が、今季から同僚となったイチロー外野手の母国キューバでの絶大な人気を明かしている。

将来のMLBを背負って立つ若き才能が、喜々としてイチローへのリスペクトを表明するさまは実に微笑ましく、イチローと同じ日本人として誇らしさを覚えるものでした。

球界全体が悲しみに包まれた日

フェルナンデスが亡くなった当日のマーリンズ対ブレーブスの試合(この試合はフェルナンデスが先発の予定でした)は中止になり、急遽行われた記者会見は、球団社長、監督、同僚たちが受け入れ難い現実に直面するさまが実に切なく、いたたまれないものでした。
また、MLBを代表する選手たちが次々と悲しみと弔意を表し、その早すぎる死を悼みました。

マ軍エース急逝に戦友から追悼の声続々「衝撃と悲しみ」「真の戦士失った」
25日早朝(日本時間同日午後)、マイアミビーチで起きたボート転覆事故で逝去したマーリンズの若きエース、ホゼ・フェルナンデス。今季16勝8敗、防御率2.86、253奪三振と、サイ・ヤング賞に匹敵する活躍ぶりを見せた豪腕は、これからのメジャーを背負う選手の1人として地元マイアミに限らず全米、そして故郷キューバでも大人気を博していた。

そして行われた現地時間26日のマーリンズ対メッツ戦。マーリンズの選手全員がフェルナンデスの番号である「16」を背中に負ったユニフォームに身を包んで臨みました。

先頭打者ホームランを放ったディー・ゴードン

冒頭の動画は、1回裏に先頭打者のディー・ゴードンがホームランを放ち、ホームベースを踏んだ後に天を指差したところで涙をこらえきれなくなり、ネクストバッターやダッグアウトのチームメイトと抱き合う様子を記録したものです。
フェルナンデス逝去のニュースを事前に知っていれば、誰もがもらい泣きしてしまいそうな動画ですが、私は今シーズンのゴードンを取り巻く状況を考えると、なおさら涙を禁じ得ませんでした。

ディー・ゴードン

「フラッシュ・ゴードン」の異名を持つ名投手トム・ゴードンを父に持つディー・ゴードンは、ドジャースに在籍していた2014年シーズンにも盗塁王を獲得するなど、その才能の片鱗を見せていましたが、2014年12月にマーリンズへ加入すると、翌2015年シーズンに大ブレイクを果たします。打率.333を記録してナショナルリーグ首位打者を獲得した他にも、205安打でナショナルリーグ最多安打(両リーグ最多)を記録し、打撃以外でも58盗塁で2年連続となるナショナルリーグ盗塁王(両リーグ最多)に輝き、守備面においても二塁の守備力を飛躍的に向上させゴールドグラブ賞を受賞するなど、MLB全体でも最大級の活躍を見せます。

更なる活躍を期待されたゴードンは2016年1月にマーリンズと5年契約を結び、そのキャリアは順風満帆であるかに見えました。

禁止薬物による出場停止処分〜現在

2016年4月29日、禁止薬物のテストステロンとクロステボルに陽性反応を示し、80試合の出場停止処分を受けます。ゴードン本人が早々に過ちを認め謝罪したことから、A・ロッドやライアン・ブラウンの時に比べればさほど大きな問題にはなりませんでしたが、「昨年の大活躍も薬物のたまものか?」といった意見も多く見られました。

7月28日(現地時間)に出場停止が解け、再び二塁のレギュラーとして出場しているものの、昨年の活躍とは比べようもない状態に陥っています。
最大の武器であるスピードに関しては、75試合に出場に対して27盗塁(H28.09.27現在)と相変わらずの韋駄天ぶりを見せているものの、打率は.260〜.270を行ったり来たり、出塁率も.300そこそこと、トップバッターとしての責を果たせずにいます。

ゴードンが抱えているであろう苦悩

ここからはあくまでも私の予想になります。

自身が不在でも一時はワイルドカードを争う位置で戦ったチームに。自身が不在の間、その穴を埋めてくれたチームメイトに。復帰は果たしたものの、コンディションが上がらず昨年の活躍とは比べようもない現状に。ゴードンがどのような感情を抱いているか想像すると、大変複雑な気持ちになります。
恐らく彼は苦悩していることでしょう。成績のため・契約のために薬物の力を使っても、発覚すればチームやファンを失望させることに繋がります。それがわかっていても薬物に頼った自分の弱さに、贖罪には結果を出して認められるしかない状況のなか、不調から抜け出せないことに、苦しみ抜いているのではないでしょうか。

そして、チームでも仲の良かったフェルナンデスの、突然の死が訪れます。

それでもゴードンは、ホームランを打った

若きエースを失った悲しみに包まれたマーリンズ・パーク。1回裏、先頭打者ゴードン。ここで彼がホームランを放つと予想できた人は果たしているでしょうか。復帰後の不調、薬物使用を理由とする懐疑的な目……その理由は様々でしょう。

私は宗教的なものや奇跡といったものには懐疑的です。因果関係がはっきりしない事柄があっても、それをスピリチュアルな理由を使って説明することに違和感を感じます。ただ、そのように考える私でもこれだけははっきり言えます。『ゴードンのホームランはフェルナンデスが打たせたもの』であると。

自分の行動に対してメンタルがどれほど大きな影響を及ぼしているか、私にはよくわかります。バッターボックスに立ったゴードンの心中を完全に推し量ることはできませんが、今日のゲームに限っては、コンディション不調に関わる様々な心の動きが「フェルナンデスに勝利を捧げる」という強い思いに圧倒されたのでしょう。
このゲームでのゴードンは5打数4安打2打点の大活躍により、チームの勝利に貢献しています。この活躍が彼のメンタルによってもたらされたものであることを証明する術はありません。ただ、試合後の彼はこのようにコメントしています。

「神は信じないんだけど、あんなに遠くにボールを飛ばしたことはない。誰かが力を貸してくれたんだ。(ダグアウトでは)人生最高の瞬間だった。僕には子供がいない。だから、彼のためにホームランを打った時は人生最高の瞬間だった」
【出典】急逝のマ軍エース右腕に捧げる涙の先頭打者弾 「誰かが力を貸してくれた」

ゴードンのこれから〜フェルナンデスへの追悼に変えて

不調に喘ぐなかフェルナンデスのために力を尽くし、ホームランを捧げたゴードン。このあまりにもドラマチックなできごとに対し、私は涙を禁じ得ません。ゴードンが薬物使用によって背負った業や感情を慮るとなおさらです。ただ、これで彼が復調するとは限りません。また、このホームラン一本でファンやチームを裏切ったことに対する贖罪を果たしたとも思えません。
しかし、あのホームランに対する観客のスタンディングオベーションは、天に召されたフェルナンデスと、何よりもホームランを放ったゴードンに向けられたものであることは間違いありません。

ゴードンには来期以降があります。一生懸命野球に取り組めば、ファンはわかってくれます。失敗を犯しても再び受け入れてくれる度量が、メジャーリーグにはあります。これからの彼に注目し、応援していきたいと思います。

そして、天に召されたフェルナンデスの魂の安らかならんことを(神様を信じていなくても、このぐらいは言ってもいいでしょう?)。彼の家族の悲しみが、少しでも早く癒えますように。ゴードンとマーリンズのこれからを見守って下さい。

【記事内の選手データ・エピソード出典:Wikipedia・MLB公式サイト・SportsNAVI・Fullcount】

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